みっしょんこんぷりーと!

boredoms2012-01-22

長かった…。
これでやっと、けいおん!飛び出し小僧のラストを飾るさわちゃん先生を画像にアップすることができた。ほんとにここまで長かった、最初に唯さんの画像をアップしたのが去年の一月二十三日ですから、あと一日遅かったら危うく丸々一年かかるところでした、というかもう一年かかりました。一年って早いなおい、ありがとうござました。
次からどんな画像にしようか。





獣王伝 雷血【 番外編 Last Challenger 】
第六話「挑戦者、恐怖し、そして興じる」


「おうルイチ、どこで何してるんだ?」
 餃子の部屋に上がり、ラストチャレンジャーの最中、一豊からわしの携帯電話に電話がかかってきていた。
「おう一豊や、何をしておると思う? なー?」
 わしはあぐらをかいて、餃子が出してくれたサイダーを一口いただく。なお、今現在あぐらをかいているのは今日の服がズボンだからである。ママ殿が買ってきてくれた、カーキー色の可愛らしい七部丈のズボンだからである。スカートの時にはもっとしおらしく、きちんと正座で座る事ぐらいは容易にこなす淑女だということを、ゆめゆめ忘れないでいてもらいたい。
「なーじゃない。わからないから聞いてるんだろうが」
「ちぇっえええー冷たいのーちぇっえええん」
「んな事より、早く帰ってきなさいって母さんが怒ってるぞ」
 その瞬間、背筋に悪寒が走る。ママ殿だけに。ゲラ、ゲゲゲ。なんて、つまらない事を考えている場合ではない。
「おわたたた、ママ殿が怒っておるのか? だから電話をかけてきたのじゃな……ど、どれくらい怒っておる?」
「もうそりゃプンプンしてるぞ。プンプンしすぎて、さっきから雑巾をしぼっては濡らし、またしぼっては濡らすという奇行を繰り返してるよ」
 それを聞いて、あぐらをかいていたわしはその姿のまま飛び上がった。体感で、軽く三十センチくらいは浮いただろうか。その様子を見て、餃子は思わず声を上げる。あぐらをかいたまま飛び上がることができるなんて、人間が兼ね備える恐怖への反射神経というものはなかなかに侮れないものだと、さっきよりも三十センチ高くなった目線でしみじみと考えた。
「ママ殿恐いっ! ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさい!」
 いつもは優しいママ殿は、怒ると恐いのをわしはよく知っている。
 昨日だって、風呂上りに裸で家中を走り回っていたら、いとも簡単に捕まって、尻を平手で力の限りに叩かれた。五回もだ。数時間はわしの尻から紅葉型の痕が消えることはなかった。
 あぐらのまま飛び上がり、その着地と同時に土下座をした。その行動に、また餃子が声を上げた。電話口の向こうにいるママ殿には今のわしの姿が見えるわけも無いのだけれど、深く、それはそれは深く頭を下げた。この想いがどうか届きますようにと、頭を下げた。
 薄い青色のボーダー・チェック・ストライプの柄をしたワンピースからは、柔軟剤の甘い香りがして、今日の朝にこのワンピースを着せてくれたママ殿の優しい、抱きしめたくなるような笑顔を思い出していた。今はもう、あの笑顔はどこかに消え失せて、さながら般若面の様になっていると思うと、寒くもないのに身体が震えた。
「あぁすげえ怖いぞ、また母さんに怒られるぞお前。もうそろそろ帰ってくるんだろう? 母さんには適当に言い訳しておいてやるから、だから早く帰ってこいってば」
 わしは身体を軽く震わせながら、土下座の形からゆっくりと姿勢を直していった。今の気持ちと状況的に、今度はあぐらではなく正座を選択した。なんとか気持ちを切り替える為に、残っていたサイダーを一気に飲み干す。恐怖と緊張でカラカラになっていた喉に、炭酸が痛いくらいよくしみた。
「で、でもの、まだもう少しかかるのじゃ、なんせ餃子とラストチャレンジャーをしておるからな」
「ラスト……チャレンジャーだって?」
「うんむ、ラストチャレンジャーじゃ。と言ってもお主にはわからんじゃろうがな」
「知ってるともさ、ラストチャレンジャー。略称はラスチャレ……」
「ぬ? 一豊?」
「1999年発売以来、日本だけではなく今や全世界において幅広い人気を誇るトレーディングカードゲームだな。おもちゃ屋さん、カードゲームショップ、百貨店や量販店のおもちゃ売り場、コンビニ、あとはカード自販機により絶賛発売中だ。主なターゲットは小学校から高学年男児、しかしながら大きなお友達が夢中になる事も珍しくはない」
「やけに詳しいではないか一豊! なんじゃ、どうした? お主のキャラではないではないか? お主は中身のない、何もない主人公のはずなのに」
「しまっ、あ! い、いや! テレビ、そう、昨日テレビで特集番組が放送してたからさ、お前と一緒に見てたじゃないか、はは! はっはは、ははは!」
「……確かにその番組は昨日やっておったが、わしは一人で見ておったぞ」
 わしはなるべくじっとりした低音で一豊の回答を否定した。
 怪しい。
 一豊は何かを隠している。とてつもない、何かを。
「あ!? いや! あの、いや!」
「……何よ」
「急に標準語になるなよ! なんか恐い! あぁ恐いわー女子って! えーと、あのー、あれだ、うん。と、とりあえず、早く帰ってきなさい!」
「じゃ、じゃがの! 聞いてくれ一豊よ、この戦いにはメロンがかかっておるのだぞ?」
「何! メロンだって!?」
「そうじゃよ、吾妻家のみんなが大好物のメロンじゃよぉ」
「……その戦いに勝ったら、メロンをもらえるのか?」
「うんむ、そうじゃ」
「ルイチ、ちょっと待ってろ」
 電話口の向こうから、ガタッと音がして、バタバタと早足で歩く音が聞こえる。
「おい母さん! ルイチがメロンを持って帰ってくるかもしれないぞ!」
 さっきまで一豊は家族がいる居間からは少し離れた廊下で電話をしていたようだ、恐らく話している内容をママ殿に聞こえない様にしてくれていたのだろう、帰ったらアメちゃんでもあげようか。
「うん、うん、え? めぞん一刻じゃないよ! メロンだよ! え? それなら許すって? だよな! っておい! 脱ぐなジイさん! 喜びすぎだろ! まだ『かも』しれないって段階だから! って母さん! それはメロンじゃなくて雑巾だ! 食べちゃ駄目!」
電話口を少しずらして家族にメロンの報告をしているようだ、喜び勇んでいるみんなの姿が目に浮かぶ。吾妻家のみんなはメロンが死ぬほど好きなのである。今はすっかり枯れ果てた仁成まで、メロンが食卓に並ぶと一豊と奪い合いをするくらいだ。ママ殿の怒りを回避する為にも、これはなんとしもこの戦いに勝ってメロンをゲットしなればならない。
「母さんの許しが出たぞルイチ! ところで、そのメロンはちゃんと熟した食べ頃なんだろうな?」
「あったりまえじゃ! このわしが認めた食べ頃の美味しそうなメロンじゃ」
「……よし!」
「よし!」
「んじゃ迎いに行くから、あんまり迷惑かけずにいるんだぞ」
「いや別にお迎えなどかまわんぞ、子供でもあるまいし」
「母さんが迎えに行けってうるさいんだよ、応援して来いってさ」
「別によいのに、まぁそれならば気をつけてまいれよ」
 携帯電話を切り、餃子の方へと向き直る。
「中断して悪かったの、餃子」
「いやいや全然かまわないよ。吾妻、なんだって?」
「わしをお迎いに来るそうじゃ、別にかまわんのに」
「そりゃ心配するさ、朝の十時に家を出たのにもう少しで六時なんだからね、遅くなる時は家族の人に連絡しておいた方がいいよルイチちゃん」
「くっ……餃子が正論すぎて何も言えん! まぁそれより、そろそろゲームを再開しようではないか」
「うん、そうしよう」
 ゲーム開始からすでに五ターン目が経過しており、現在は餃子のターンである。
 お互いのプライドの残数は、餃子が残り五つ、わしが残り四つ。
 餃子のフィールドには、チャレンジャーカード『赤い狂戦士 トマト・リコピョン レベル1 BP(ブレイブポイント)1000』、『緑の伊達男 ピーマン・ビッグベン レベル1 BP2000』、『黄色い猛者 キャロット・カロティン レベル2 BP3000』が場に存在する。
 対するわしのフィールドには『銀天六歌仙 拳闘士ミザール レベル1 BP3000』、『銀天六歌仙 料理長アリオト レベル1 BP2000』が展開しているものの、その全てがレスト状態である。ちなみにレスト状態とは相手の攻撃を防げない状態である。要は、餃子が展開中の三体が総攻撃を仕掛けてくれば、わしのプライド残数は一つになるわけで、非常にピンチとなるわけだ。
「ここで総攻撃を仕掛ければ、けっこうピンチなんじゃないのルイチちゃん?」
「ゲッゲラ! ぬかせ餃子小僧! やれるものならやってみい、できるものならばのぉ!」
 とは言うものの、餃子の言っていることはまったくの正論であり、実際このままではわしは窮地に立たされる事になるであろう。それにも関わらず、わしのこの余裕たるやこれいかほどに。もちろんの事、この余裕ぶりにはこの場の流れを変えることが出来る切り札があるからなのであり、諦めの末に開き直ったわけではまったくもって違う。
 現在わしの場に展開中である『銀天六歌仙 料理長アリオト』が存在する時にのみ使用できるレスキューカード『七星レストラン ムッシュ・アリオト』をわしは手札に持っているからだ。
 レスキューカード『七星レストラン ムッシュ・アリオト』の効果は、カード名に食材の名称が入っているカードを一体のみ料理(破壊)できる、そして調理(破壊)後、アリオト以外の自分のチャレンジャーカードがレスト状態で存在していれば、一体のみを選択し、それをアクティブ状態にする事ができる。
 条件が限定されている為にかなり使いにくいカードではあるが、餃子の様に食べ物をモデルにしたデッキ構成の相手には効果絶大である。これが決まれば、流れを変える事ができるはずだ。使うタイミングは幾つかのパターンが考えられるが、今回は三回目の攻撃を仕掛けてくる時にこのレスキューカードを発動させ、次のわしのターンでは餃子の場にはレスト状態のチャレンジャーカードのみ、てんでがら空きの状態を作り上げるのも悪くはない。餃子の苦虫を噛み潰した様な顔でも拝ませていただこうではないか。
「さらに僕は! レスキューカード『賞味期限切れ』を発動!」
「おぁぁぁーマジでかーーー!?」
 レスキューカード『賞味期限切れ』、このカードの効果は、カード名に食材の名称が入っている全てのカードは料理(破壊)されることはない。さらに、対象となったカードのBPを6000アップ。ただし、次の自分ターンのエンドステップ時に効果の対象になったカードは腐る(破壊)。
「野菜族にとって調理長アリオトは食材カードを破壊する専用レスキューカードを持っている天敵だからね、万全の対策を取らったよ!」
「ぐぅぅぅい……一端の料理人が、それもあの料理長アリオトともあろうものが、まさか賞味期限切れの食材を料理に使う事などできるはずもない……やってくれるではないか餃子ぁ! 小僧とばかり思っておったが、男子三日会わざれば刮目して見よというわけじゃな! こん糞ガキが!」
「ルイチちゃんも十分に糞ガキだけどね! それじゃそろそろチャレンジフェイズに移行するよ、まずは『赤い狂戦士 トマト・リコピョン レベル1 BP7000』でチャレンジアタック!」
「ツェアッ!」
 わしのプライドは、これで残り三つ。
「続けて『緑の伊達男 ピーマン・ビッグベン レベル1 BP8000』でチャレンジアタック!」
「ツェアアッ!」
 わしのプライドは、残り二つ。
「まだまだあ! さらに『黄色い猛者 キャロット・カロティン レベル2 BP9000』でチャレンジアタック!」
「ツェアアアッ!」
 わしの、プライドは。
「残り、一つ……」
「これで僕はターンエンドだ! さぁ次はルイチちゃんのターンだ。僕のプライドはまだノーダメージ、このピンチをどう乗り切るかな?」
「くぃううう」
 心が折れそうだ。カードをドローするのがとても億劫でたまらない。
 この場を乗り切るには、『銀天の王 アルカイド』を引き、ラストチャレンジャー宣言を発動して餃子の場を一掃するしか方法はない。
 がしかし、餃子の緑黄色野菜デッキの構成を考慮して、レスチューカード『七星レストラン ムッシュ・アリオト』を構築枚数限界の三枚に増やした為に『銀天の王 アルカイド』を一枚に減らしている。四十分の一という確率で、うまくアルカイドを引けるとは今の流れからして到底思えない。
「ぐぅぅぅ、やめたくなってきたぁ……」
「諦めるな」
 突然、声が聞こえた。
 これがまたやけに渋い声だ。
 目の前にいる餃子の声ではない、とすると一豊であろうか、だがそれにしては声が渋すぎる様に思う。
「最後まで挑戦をやめるな、自分で限界を決めるな! 最後まで諦めない心、それこそが勝利を掴む鍵だ!」
「おう吾妻来たのか、てか、今の名言っぱいの何? んで、お前いつの間に入って来たの? どうやって音もなくこの部屋に入ってきたんだよ気持ち悪いな! 全然気が付かなかったよ」
 これは餃子の様子を見る限り、何のことはない、ただの一豊のようだ。
「なんじゃ一豊か、お迎えご苦労」
 と言いながら、わしは一豊のいるであろう入り口の方へと視線を移した。
 移したところで、わしは声を失った。
 その人は、部屋の入れ口にあるドアにもたれ掛かって立っていた。うっすらと微笑みながら、左手をジーンズのポケットに突っ込んで、もう片方の手で髪をかき上げている。そして何よりも、すごくお洒落な赤ぶちのサングラスをつけている。
 わしは、この人を知っている。
 何を隠そう、あのお方こそ、わしの憧れの人なのだ。まさか、こんな所で逢えるなんて思ってもみなかった。
「吾妻、何してるのさお前? 何そのポージング、あと何その糞だせえグラサン? ボケなのそれ? あ、もしかしてオシャレのつもり? だとしたらあんまりイジらない方がいいのかなプッププスプス」
「パ、パ、パッ」
 あまりの興奮に声の震えを抑えることが難しい、胸がきゅとして、吐きそうだ。手は汗でぐっしょりと濡れているのが分かるし、顔が燃える様に熱い、耳も熱い、いつもより血液がドタバタ走る。それなのに、脳には血が足りずに頭がぼんやりとする。全てが、火照る。これが遠い昔に忘れてしまっていた、火照るという感覚であろうか。こんな気持ちは、実に八百年ぶりのことである。 
「パ? え、どうしたのルイチちゃん?」
 ワンピースの胸元を、右手できゅっと固く握り締める。喉が詰まる。ぐっと息を呑む。呑み込めない。喉か渇く。また再度ぐぐっと息を呑む。やっぱりうまく呑み込めない。
 嬉しいあまりに震える足の、両親指に一杯の力を込めて、できる限り慎重に立ち上がる。少しでも気を抜けば、倒れてしまいそうだったからだ。
 すっと息を吸って、くっと息を止めた。あの人の名前を、腹式呼吸で叫ぼう、そう心に決めた。
 わしの憧れ、ずっと逢いたかった人が目の前に居る。
 あの人は。
 あの方こそ!
「パッケージ中島さん!!!」 
「パッケ……え?」
 パッケージ中島さん、彼は若くしてラスチャレ界の絶対挑戦王に輝いた人で、ラスチャレのカリスマである。全ラスチャレプレイヤーの憧れであり、目指すべき目標とされている、生きた伝説のようなお方だ。ロングヘアーの金髪と燃えるような真っ赤なふちをしたサングラス、それに真っ白なコスチュームが特徴なのだが、今日はサングラスをかけているものの、上着は白いトレーナーにジーパンというラフなお姿だ。あれはきっと、そう、プライベートバージョンなのだろう。
「きゃおおおーん! ど! う! し! て! どうしてこんな所にパッケージ中島さんがいらっしゃるのでございますのことですの!?」
「え、どうした!? 何!? フルテンションじゃないかルイチちゃん! あと喋り方が変だよ! お嬢様の成れの果てだよ!」
 パッケージ中島さんは髪をかき上げ、ふっと微笑んだ。
「ずきゃゃゃーん! 髪をかき上げたお姿が最高にかっこよろしくてございますことですわよ! はぁはぁ」
「はぁはぁするな! 何これマジなのこれ、あれ吾妻だよ。糞だせえグラサンかけた吾妻だよあれ! 君のお家の人でしょうよ!?」
 間違いなく今、わしの目はぶっトんでいるだろうと思う。もう、わけがわからない。
 興奮というものは、人をこうまで高ぶらせるものか。餃子が何かを言っているのはわかっても、今のわしには言葉の意味まで理解する事はほぼ不可能である。
「なぁルイチちゃん、だいたいこんな所にあのパッケージ中島が来るわけないじゃないか、ていうかあれは吾妻だからね。後で吾妻が迎いに来るって言ってたよね自分で! ねぇ何これ、あんたらの身内ネタなわけ? 自分の家でやってよ! おい吾妻、お前もいい加減こっち来て座れよ、いつまで髪かき上げてんだよ糞だせえな」
 そしてまた、パッケージ中島さんは優しく微笑んだ。キラリと輝く白い歯が覗く。
「……導かれたのだよ、君達のチャレンジングエナジーにっね!」
「吾妻ぁぁぁ!!!」
「きゃー! お美しい歯でございますですこと! ご機嫌麗しゅう(?)!」
 パッケージ中島さんは華麗に親指を立て、餃子は派手にすっころんだ。
「この八百屋さんからチャレンジングエナジーがビッンビンに放たれていたよ、それはもう危険なくらいにね。あれだけのエナジーの放出を見たのは久しぶりさ、そんな戦いを、この私が見逃すわけにはいかないからね」
「そ、そんなにもビンビンでございましたですこと、わたくしたちのエナジーがですこと? マジのですのことの?」
「ルイチちゃん、喋り方……」
「あぁ、凄まじかったさ。あまりのエナジー質量に八百屋さんが傾いていたからね」
「すんげぇぇぇー! 傾いてたのすんげぇ危ねえでございますことですわ! あ、あの、その、ペッティングエナジーという」
「ちょ! チャレンジングエナジーね、ルイチ君」
「え? あぁ、チャレンジングエナジーとはどういったものでございますことですの?」
「チャレンジングエナジーとはね、挑戦者から放たれるオーラのようなものさ。君達のエナジーにはキラリと光るものがある。自信を持ちたまえ、君達は強い、この俺が保証する」
「う、嬉しゅう……ございまふでふわ」
 精神的に、軽くイってしまった。
「さぁルイチ君、次は君のターンだ、そろそろカードをドローしたまえ!」
「はい! パッケージ中島さん! わたくし! 決して諦めることなく、カードをドロー致しますでございますですわ!」
「そうだ、その心が大事なのだよルイチ君! 自分の道を切り開くのは、いついかなる時にも自分だけだ! この俺に見せてくれ、君の生きた証を! 魂の加速を! 誇りを! 君こそが最後の挑戦者だ!」 
「んきょー! パッケージ中島様あああん!」
「なんか怖くなってきたんですけど僕。怖い、怖いよ吾妻家」


■つづく■

のぅ、叉丹?

boredoms2011-09-28

いやー書くこと無いです。
吉木りささん可愛いなぐらいしか書くことないです。
あとはバトスピの次弾のブースターが楽しみってことぐらいしか。
ジュエルペット・サンシャインって面白いなとか。
きんいろモザイク面白いなとか。
あとは中学の時に夢中になっていたサクラ大戦、どうしてラストステージの叉丹はあんなにも固かったのか。
いやぁー書くことない。





獣王伝 雷血【 番外編 Last Challenger 】
第五話「挑戦者、欲する」


 鶏つくね串、三本。
 カツカレー、一皿。
 ミンチカツとコロッケを各一個。
 みたらし団子、二本。
 シュークリームを二個。
 フルーツ牛乳とコーヒー牛乳を各一本。
 以上、今日の成果である。
 これだけの飲食物を、わしは田護崎商店街を歩くだけで飲み食いできる。タダでだ。
 別に盗って食ったわけではない、ちゃんと商店街の各店舗から無償で提供してもらった飲食物だ。
 この人徳たるや、自分でさえも恐ろしいほどである。
 毎日毎日、金魚のフンのようにママ殿の後を付いてこの田護崎商店街へお買い物に来ている内に、もう今ではすっかり商店街のプチアイルドルになっているこのわし苺畑ルイチ、千十八歳である。
 行く先々のお店で「あらルイチちゃん」と声をかけてくれるので、立ち止まって世間話をする。大体はその時にお店にあるものをわしにくれるわけだ。世間話しとは言っても、色々な悩みの相談をさせることがほとんどである。嫁姑問題から夫婦の悩み、ご近所付き合い、子供の受験やお見合い話、果てはペットの相談までそつなくこなす。
 普通の立ち話なら五分やそこらで済むのだが、相談話しとなればそれなりの時間を要するわけで、自然と長話になるわけだ。というわけで、朝の十時に家を出て、この商店街にお使いに来たはずが、現在は夕方の五時である。これは、ものすごくしゃべり過ぎてしまった。
 門限が六時なので、最後の目的地である八百屋へと急いだ。 
「ぶるぅぅぅあクソ坊主! 今日はなんでぇ? お使いか?」
 威勢良く、そして品性の欠片も感じられない声をかけてきたのは八百屋の店主だ。
「この八百屋の店主、顔の出来は三級品、頭の出来も三級品、性根とくれば四級品、それでも売ってる野菜と口の悪さは一級品。というのがもっぱらの評判である」
「それって台詞じゃなくて地の文章で書くことじゃねぇの?! 大根で頭ぶち割るぞタコ野郎この野郎」
「それはそうと店主や、わしはクソ坊主ではない。わしは娘じゃ。女じゃ。乙女じゃ。言うとするならクレオパトラとでも言うのが妥当じゃろう」
「で、今日は何を買いに来たんだクソ坊主」
 クレオパトラのくだりを無視されてしまった。
「まぁよい。ピーマンをくれ、その一袋五個入りのやつでよい。安くしておけよ」
「うるせいやタコ助、百八十円だ」
「ほい、百八十万円」
「ネタが古過ぎらぁボケナス!」
 店主は吐き捨てるようにそう言うと、わしの手から百八十円をふんだくり、乱暴にピーマンを袋に詰めてわしに投げつける様に渡した。
 なんとも態度の悪い商売人である、普段のわしならば堪忍袋の緒が弾け飛ぶところだ。ところがだ、このピーマン一袋、値札を見ると二百二十円と書いてある。この店主、さりげなく値段をまけているのだから中々に憎めん奴である。
「ほらほら用が済んだら早く帰りな、商売の邪魔でぇ」
 これでようやくとお使いは完了した。
 が、しかし。
 わしの真の目的は、まだ完了してはいない。
 この八百屋に数々と並ぶ野菜、そのひな壇の最上部に鎮座する、マスクメロン。それこそが、わしの真の目的なのである。
「おい店主や、そのマスクメロンを持ってみてもかまわんか?」
「あ? まぁかまやしねぇが、落っことさないようにしろよクソ坊主」
 小うるさい店主の言葉はさて置き、お宝の品定めといこうではないか。
 まず手に取った時の重み、これは十分な重みがある、実が詰まっている証拠だ。
 網目の高さもいい高さだ、それに網目の目も細かく、全体的に均一な広がりを展開している。
 このメロン、実に良い物だ。
 指で軽く弾いてみる、低く濁った音がする、いい音だ。
 メロンのおしりの部分を優しく押してやる、弾力がある、同時に香るメロン特有の甘美な匂いが鼻腔をくすぐる。
 T字のへたが細くしおれて、皮の色が黄色くなっている。
 間違いない。
 このメロン、食べ頃だ。
 店主にバレないように、ここで一度わしは生唾を飲む。
「ズギョウンッ!」
「音がえげつねぇ! どんだけ生唾飲むんでぇこのタコ助」
 生唾を飲んだのがおもいっきり店主にバレてしまったけれど、まぁいいとしよう。もう一度言おう、このマスクメロンは食べ頃である。
 このわしが、この期を逃すわけがない。必ずや、わしはこのメロンを手に入れる。そして風呂上りにこのメロンを食べるのだ、この末来だけは譲れない、離さない、揺るがない、Crazy for you!
「おうクソ坊主、もうそろそろメロンを元の位置に戻しな、売り物が駄目になっちまう」
 非常に口惜しいが、今は素直にメロンを元の位置へと戻す。
 メロンの残り香を心地よく感じつつ、値札に目をやる。 
「一玉、三千四百五十円か……」
「おうよ、こいつはかなりの上物だ、これでもかなり良心的なお値打ち価格さ」
「わしの一日のお小遣いはな、百円なんじゃよ」
「それがどうしたい?」
「で、わしの全財産は三百八十円なわけじゃ」
「それじゃ買えねぇやな、出直してきな」
「いや、わしはまだ帰らん、絶対に帰らん。店主や、貴様の息子はもう学校から帰っておるのか?」
「あ? おう、うちのどら息子なら少し前に帰ってるが、それがどうしたい?」
「ならば好都合じゃ。貴様の息子と勝負して、わしが勝てばメロンはいただく」
「おいおいおい、話しが急すぎてさっぱり理解できねぇ。なんでそうなるんでぇバロー」
「話しは聞かせてもらった!」
 店の奥から聞こえた声に視線を移す、そこには八百屋の息子が腕を組んで息を荒くしていた。
「おうどら息子! 急に出てきて何言ってんだてめぇは」
「ルイチちゃん、久々の勝負だ」
「うんむ、今回は絶対に勝たせてもらうぞ餃子」
 餃子とは、この八百屋の息子の高校でのあだ名である。奇妙なあだ名だ。
「さっきから勝負勝負ってよ、何の勝負なんでぇ? とんちき野郎共だなてめぇらほんとに、馬鹿ばっか揃いやがってこのタコ」
「もちろん、ラストチャレンジャーで勝負じゃ!」
「俺の野菜デッキをとくと味わうがいい! 緑黄色野菜の偉大さを教えてやるぜ!」
「ふんっ、軽く料理してくれるわ! 野菜だけにな! ゲッゲラララ!」
 今、メロンを賭けた壮絶な挑戦が始まる。

風がビュビュンとビュビュビュビュ

boredoms2011-07-14

いんやーーー今日のお話はヒドイい。
いつもひどいけど今日は特にヒドい。
めちゃくちゃですね。
メチャメチャ〜♪
というわけで、今日の画像はういちゃんの飛び出し小僧です。
というか、飛び出し小僧というのは違うような気がする、この場合は飛び出し少女の方が正しいのでしょうか。
それはそうと、鬼灯さん家のアネキは面白いなぁと思う今日この頃でした。



獣王伝 雷血【 番外編 Last Challenger 】

第四話「挑戦者、吼える」


 今現在、すでにゲーム開始から8ターン目が経過している。
 お互いのプライドの残数は、ネズちゃんが残り二つ、わしが残り一つ。
 ネズちゃんのフィールドには、マナカード『Bar ムーンライト』が展開中、そしてチャレンジャーカード『月守りのムーディー レベル1 BP(ブレイブポイント)8000』、『月面紳士 ダット レベル2 BP9000』、さらにパイオニアカードである『月影のジェントルメン レベル3 BP15000』が全てアクティブの状態で存在している。
 対するわしのフィールドには『銀天の王 アルカイド レベル1 BP6000』が一枚だけだ。
「マナカード『Bar ムーンライト』の効果はカード名称に『月』と入っているチャレンジャー、パイオニアのBPを相手のターンに3000ポイント追加するカードだ。旦那のチャレンジャー、パイオニアには全て『月』が入ってる。こりゃルイチちゃんは地味に痛いだろうな」
 ちなみにマナカードとは、配置することでフィールド全体に影響を与える永続カードなのである。
「そんなひ弱なチャレンジャー達がいくら並ぼうとも片腹痛いわ。この勝負、このターンで決めてやる! わしは『銀天の王 アルカイド』をラストチャレンジャーとして宣言する!」
 ラストチャレンジャーではゲーム中に一度だけ、『最後の挑戦者(ラストチャレンジャー宣言)』を指名できる。
 選べる対象としては、パイオニアカードのみとなっている。
 パイオニアカードには『ラストチャレンジャー宣言時効果』というものが存在し、効果はカードによって様々なものがある。
「ルイチちゃんのプライドは残り一つ、ということは! 『銀天の王 アルカイド』のラストチャレンジャー宣言時の効果発動条件を満たしていやがる!」
「唸れよ、銀天! 『銀天の王 アルカイド』のラストチャレンジャー宣言時効果発動! フィールドに存在する『銀天の王 アルカイド』以外のBP8000以上のチャレンジャー/パイオニアを、全て破壊しゅる!」
「噛みやがった! ルイチちゃん大事なとこで噛みやがった!」
「わ、私の可愛い月の使者達が……全てアナザーワールド送りですと!?」
「へっへへへ、きたねぇ花火だ」
「こいつ糞ひでーヒロインだな」
 ちなみにアナザーワールドとは、いわばお墓みたいなものだ。
「さらに、『銀天の王 アルカイド』のラストチャレンジャー宣言時効果によってチャレンジャー/パイオニアの破壊に成功した時、破壊したチャレンジャー/パイオニアのBP合計を『銀天の王 アルカイド』のBPに追加する! よって『銀天の王 アルカイド』のBPは38000じゃ! 銀天の空の下、ひれ伏せ愚民ども!」
「男前過ぎるだろこのヒロイン」
「これで丸裸じゃぞネズちゃんや! 勝機勝機勝機! アタックタイムに移行、そして『銀天の王 アルカイド』でチャレンジアタック! これこそ袋のネズミじゃ!」
「笑止! ここで私のレスキュータイム! レスキューカード『ムーンライトで逢いましょう』を発動! カード名称に『月』と入っている自分のアナザーワールドにあるチャレンジャーカード、もしくはパイオニアカードのどちらか一枚を選択します。召喚時効果は発動できませんがノーコストで再び召喚ができるのです! 私はアナザーワールドにあるパイオニアカード『月影のジェントルメン』を一枚選択し、フィールドにレベル1で再召喚します!」
「マナカード『Bar ムーンライト』がフィールドに展開中の時にしか発動できない不便なレスキューカード『ムーンライトで逢いましょう』を決めるなんて、さすがはネズミの旦那だぜい」
「さらに私は! 『月影のジェントルメン レベル1 BP4000』をラストチャレンジャーとして宣言します!」
「ギギッ!?」
「そりゃルイチちゃんがサイバイマンみたいな声を出すのも無理はねぇや。『月影のジェントルメン』のラストチャレンジャー宣言時効果は、相手側の全てのチャレンジャー/パイオニアに追加/減少されているBPを無効化するんだからよ。ということはだ、『銀天の王 アルカイド』はBP6000に減少、『月影のジェントルメン』はマナカード『Bar ムーンライト』の効果でBP3000が追加されるからBP7000! このままじゃ『銀天の王 アルカイド』の負けだぜい! どうするよ、どうするんだよルイチちゃん!」
「まだじゃ……わしの誇りはまだ、燦然と光を放っておるではないか! 見えぬか? この輝きが、この煌めきが、あの栄光が! 共に行こう、アルカイド! これがっ! とっておきのぉぉぉうあああ!」
「なっ!?」
「姫様! そ、そのカードは!?」
 そうこうしている内に、門限の六時になったのでおうちに帰りました。

思い出しておくれ すてきなその名を

boredoms2011-06-20

この前にも書きましたけど、白湯って美味しい。
しかも朝一の白湯はなんだか身体にいいみたいです、暇ならお試しくださいまし。
これからもどんどん白湯をプッシュしていきます。
んでから、ついにけいおん飛び出し小僧画像はサブキャラ達に突入です!
また豊郷行きたいなぁ。



獣王伝 雷血【 番外編 Last Challenger 】

第三話「挑戦者、食べる」


 ネズちゃんの家、そのリビングにてどら焼きをむしゃむしゃとほうばっている。
 どら焼きで甘くなった口の中に、熱々の玄米茶を流しこむ。この瞬間、この瞬間が途方もなくこのわしを幸福にさせる。
 今はこのどら焼きと玄米茶、それ以外にはもう何もいらない。
 それ以外にあってはならない。
 幸せだ。
 もう幸せすぎて。
 あまりに幸せすぎて、ここに何をしに来たか忘れてしまってたくらいだ。
「なぁネズちゃん。なぜわしはここにおるのだ?」
「えぇ!? ラストチャレンジャーをしに来て頂いたのではないのですか?」
「おーそうであった。最近は物忘れが酷くてどうにもいかん」
 最近というか、実は今日の朝の事でさえ記憶が怪しい。一豊に何か気に障ることを言われたような気もするが、はっきりとは思い出せない。なにせ千年も生きいるのだから、わしの優れた脳みそをもってしても記憶するという事、その行為自体に飽きたてしまったということであろう。老化ボケした、というわけでは決してない。絶対にないのだ。
「お、来てたのかい小娘」
 そうやってわしに突然声をかけてきたのは、この周辺の森に住む狸だ。
 当然わしにはそう聞こえるというだけで、実際には人語で喋っているわけではないので「クゥークー(お、来てたのかいルイチちゃん)」と表記すべきなのだが、ややこしいのでやめておく。
 ネズちゃんの家には、こういった森の住人達が出入りできるようにとあちらこちらに小さな通り窓を作ってあるのだ、この狸もその通り窓から侵入してきたのだろう。
「おぉ茶釜ではないか。今日も相変わらず獣臭いのう、あまりそばに寄るでないぞ」
 この狸のことを、わしは『茶釜』と呼んでいる。
 茶釜はわしらのいるテーブルの下まで(寄るなと言ったはずなのに)寄ってきて、口にくわえてあったチップスターの筒状の箱を静かに床に置き、わしを見上げた。
「さらっと酷い事言うよね君ね。あと何度も言ってるけど、オレには『アルカイド』っていう両親からもらった立派な名前があるんだがね」
うるさいうるさいうるさい! この前来た時にも言ったはずじゃ! その名前だけは絶対に許さんとな!」
 わしがこんなにも、まるで釘宮にでもなったかのように怒るのにはちゃんとした理由がある。
 ラスチャレの数あるチャレンジャーカードの中でも、わしの一番のお気に入り『銀天の王 アルカイド』と、この小汚い狸の本名が同じ名前という事に腹を立てているのだ。
 しかも『銀天の王 アルカイド』は、初めて当たったパイオニアカード(道を開く者、開拓者という意味があるらしい。まぁいわゆるレアカード)でもあり、思い入れがあるわけだ。
 それに『銀天の王 アルカイド』の絵柄も気に入っている。立て襟マントをたなびかせ、白銀に煌めく鎧を着込み、自身満々に腕を組んで仁王立ち、不敵ににやりと微笑むその表情、ショートヘアー(とはいえ女であるわしから見た感覚であり、男ならそろそろ散髪に行ったほうがいいのではないか、という微妙な長さである)の髪色がわしと同じ銀色だ。
「ひぇー怖い怖い、人間のヒステリックってのは手に負えないねぇ。せっかく美味しいグミの実を持って来てやったのによ」
「むうん……美味しい、グミの実とな」
「おうよ、オレが厳選したグミの実だぜ」
 茶釜はそう言うと、自身で持って来たチップスターの箱を軽く突いた。茶釜がその箱をくわえてこの家に入ってきた当初から気になってはいたが、そこに美味しいグミの実とやらが入っているようだ。 
「このアルカイド君はね、森では知らない者がいないほど有名なグミの実選別名人なのですよ、姫様。アルカイド君の選ぶグミの実は、本当にすばらしい味なんですよ。そうだ、アルカイド君もどら焼きどうかね?」
「茶釜な、ネズちゃん」
「え? なんです姫様?」
「茶釜な! こやつの名前、茶釜な!」
 興奮して、持っていたどら焼きを握りに潰してしまった。
「旦那、茶釜でいいぜい」
「アルカ……ちゃ、茶釜君もどら焼きどうかね?」
 それから、茶釜も加えてまたお茶をした。
 新たにラインナップされた茶釜の持って来たグミの実を試してみる。
 これが悔しい事に、美味しいのだった。爽やかな酸味の後にほのかな甘みの広がりが実に上品だ。これはやはり悔しいが、本当に悔しいが、名人と言われても相違ない。
 それから、先ほど握り潰したどら焼きを回収して、口一杯にほうばる。
 酸味のあるグミの実を先に食べているせいで、どら焼きがより一層甘く感じる、幸せの味がする。
 まさか。
 まさかここまで考えてグミの実を持ってきたというのか、茶釜は。いや、そんなことはありあえない。ただ、もし本当に狙っていたのなら、この狸、バケモノである。
「どうだい小娘? グミの実、うまかったろう?」
「いんや別に」
 強がってみた。
 気を取り直して、ネズちゃんが改めて入れなおしてくれた熱々の玄米茶を、甘くなった口に流し込む。
 この瞬間だ。
 この瞬間の為に生きているのだ。
 グミの実、どら焼き、玄米茶、それ以外にはもう何もいらない。
 それ以外にあってはならない。
 幸せだ。
 もう幸せすぎて。
 あまりに幸せすぎて、それなのに、もうわしの皿にはどら焼きがなくて。
 だから。
「のう、茶釜や。狸は木の実とかしか食えないのであろう? しょうがないから、わしがおぬしの分のどら焼きも食べてやろう、別にわしが食べたいからではなくて、優しさじゃ、老婆心じゃよ。お腹壊すぞそんなの食べたら、化学調味料とか一杯じゃぞ、病気になるかもしれんし、それにだいたい狸なんじゃしおぬし、大人しく木の実とか食べていればよいのだ」
「悪いな小娘。狸はな、雑食性なんだよ」
 狸のしたり顔というものを、初めて見た。
「ぐぬぅぅぅ……お、おーそうであった。最近は物忘れが酷くてどうにもいかん」
 やっぱりそう簡単には、狸は化かせない。

蛇が駄目ェ♪うなぎも駄目ェ♪

boredoms2011-06-08

もう単純に白湯って美味しいですよねぇ。
あとやっと、左側にある「最新の画像」ってところに、けいおんのメイン五人の飛び出し小僧が揃ったですよ。苦労したかいがありました。


(ところで、今回の番外編の話しが最近ハマってるバトルスピリッツの影響受けまくり!仲間内しか読んでないからいいよね!?
ルール説明の部分はウィキペディア様のバトルスピリッツの説明文章を引用させていただいております、ありがたやウィキペディア様)



獣王伝 雷血【 番外編 Last Challenger 】

第二話「挑戦者、遊びに行く」


 一豊が学校に行き、仁成はゲートボールへ、ママ殿はお買い物に出掛けていった。
 いつもならママ殿のお買い物について行くのがわしの日常なのだが、今日は予定があるので行かなかった。
 現在午後三時、約束の時間である。
 家に誰も居なくなるので戸締りを確認後、速やかに超高難度の術である『土竜』で地表に流れる霊脈へと潜った。
 もうわしのレベルになると歩くなんて事はしないのである、というか歩くのがめんどくさい。極力歩きたくない。とにかく、歩きたくない。日常的にそう考えながら生きていたら、偶然に生み出された術が『土竜』なのである。願いというものは、どうやら届くようだ。
 行き先は、ネズちゃんの家。干支者一番目、ネズミ男爵の住む家だ。
 先日、一豊との戦いでねずちゃんの家は半壊してしまった。しかし、戦いのあった日の翌日に訪れた時には、もうすっかり修復していたのには驚いた。
 恐らくは何かしらの術を使ってのことであろうが、別段追求する必要も興味もない。
 土竜で行けばネズちゃんの家までは五分もあれば着く。霊脈に潜って、目的地を想像して、あとはボーっとしているだけで目的地に着くのだからこんなに楽なものはない。ただその間はずっと目を閉じたままである、なんとなく、開けてはいけないという感覚があるからだった。どういう原理かは使っているわしにもよくわからんが、とにかく良し。
 約五分後、ネズちゃんの家のある地点まで無事に到達を果たす。
 感覚的には、水の中から上がるイメージで地表へと己を戻していく。
 地面から顔だけを出して、目を開ける。そこはもちろんネズちゃんの家、その庭先だった。
「ぎぎぎー」
 いつもの様に、挨拶代わりの唸り声をあげてみる。
「おや?」
 花壇に水をやっていたネズミ男爵が周囲を見渡して、地面から顔を出すわしに気付く。
「ねぇずっちゃーん」
 今日はとなりのトトロに出てくるババァのアクセントで呼びかけてみた。
 ネズちゃんは、自分が持っているじょうろに入れてある一杯の水をこぼさない様にして、器用に小走りでわしの方に駆け寄ってくる。
「これはようこそ姫様、お待ちしておりましたよ」
「うんむうんむ、水遣りご苦労様。それよりも相棒、ラスチャレしようぜっ」
 『ラストチャレンジャー』、略してラスチャレ。これが今、わしとネズちゃんが熱中しているトレーディングカードゲームだ。
 ラスチャレの対象は基本的に小学校から中高生の男子なのだが、大きなお友達も一緒になってこのカードゲームを楽しんでいる。わしとネズミ男爵も同じ穴のムジナである。
 基本的なルールとしては、四十枚以上のカードにより構築されたデッキと『意志の力』を使用して、二名のプレイヤーによる一対一でのバトルとなる。
 『フィールド』に『チャレンジャー』と呼ばれるカードを配置、その数値を比較することでバトルが行われる。
 その他にもチャレンジャーをサポートする、『レスキューカード』や『マナカード』も存在する。
 プレイヤーには『プライド』(初期値では五個)というものが設定されており、そのプライドが零になるか、もしくはデッキが零枚になると敗北となる。
 説明が非常にめんどくさいので、詳しいルールは追々説明していこう。
「受けて立ちましょうぞ、すでにデッキの調整は終わらせてあります」
「それはまことに殊勝なことじゃ。この前はわしが負けてしまったのでな、今日こそはこのわしの『銀天の王デッキ』でなぎ払ってくれるわ」
「そう簡単にいきますかな姫様? 今日も私の『月影のジェントルメンデッキ』で着実に勝たせていただきますよ」
「ほざきよるわこの独身貴族が! と、まぁ、なんじゃな、その前にお茶にしようではないか。腹が減ってはなんとかかんとか言うしな」
「そうですな、今日はどら焼きと玄米茶をご用意しておりますよ、さっさどうぞ奥へ」
「わしもおみやげにカッチカチに冷凍したチューペットを持ってきたから、食べるがよい。それにしても、ネズミがチューチューとチューペットを食べるなんて傑作よのぉ」
 渾身のボケである。
「がはっはははっ!」
 案の定、間髪入れずにネズちゃんは倒れこんで笑いだした。
 今回も、ボケは見事にヒットした。
 ただ悔しいのは、その時ネズちゃんは持っていたじょうろを上空に思わず放り出し、その後落下してネズちゃんを直撃、中に入っていた水をぶちまけてネズちゃんをびしゃびしゃに濡らした。
 正直言って、わしのボケよりもこっちのほうが幾分も滑稽だ。
「ゲラッゲゲゲ!」
 これが本当の、濡れ鼠である。

もう、ゴールしてもいいよね

boredoms2011-06-03

先日、奇跡的に女の子とデートに行く予定がありました。
実に珍しいことです。
八年ぶりです。
昔から、珍しいことをすると雨がふるなんてことを言いますが。
僕の場合は、台風が来ました。
もちろん中止になりました!
へけっ!


そして、仲間内でしか読んでいない、いや仲間内ですら読まれていない物語の本編がちょっと本当にいきずまってきまして、素人が調子に乗って物語なんて書こうとするからこんな事になるのですね、すみません、もう、ゴールしてもいいよね。今回より中断して、誰も得をしない、仲間内しかわからない、いや書いている自分ですらわからない、いきあたりばったりの番外編がスタートです。





獣王伝 雷血【 番外編 Last Challenger 】

第一話「挑戦者、目覚める」


 夜の九時には床に就き、午前四時には目を覚ます。
 歯を磨き、顔を洗って、日課である寒風摩擦を済ましたら、ママ殿に買ってもらった『くまの子 べ〜やん』がバックプリントされた上下スウェットの可愛らしいルームウェアに着替え、新聞を取ってテレビ欄とチラシに目を通す。
 それから朝ご飯までにはまだ時間があるので、こっそりと、家族にバレない程度にストックしてあるお菓子を食べる。ついつい食べ過ぎて、たまにバレそうになる時があるものの、その時は仁成か一豊、はたまた朱雀のせいにでもすればよい。
 わしの朝は、だいたいこんな感じから始まる。
 そして今日という今日もお菓子を食べ過ぎてしまった。ポテチ二袋を肴に、コーラをがぶがぶといって1リットルサイズを空にしてしまった。
 おデブな欧米の子供でもあるまいし、さすがに自分でも朝っぱらからこれではまずいと反省をしつつ、三袋目の封を切っていた。
「あっ」
 完全に、無意識であった。


 まだアホ面で寝ている一豊の部屋に忍び込み、空っぽになったポテチの袋を三つともその部屋のゴミ箱へと押し込んだ。いわゆる「いんぺいこうさく」というやつである。
 空になったコーラのペットボトルは、まだ寝ていた朱雀を叩き起こし、このペットボトルを七個集めたら願いが叶うのだと教えてやると、ペットボトルをたいそう大事そうに抱え込み、喜び勇んで東の方角へ飛んで行った。相当な阿保である。この手であと六回は「いんぺいこうさく」ができそうだ。
 そうこうしている内に朝ご飯の時間になった、たとえ千年生きていようと、ご飯を食べる時というのが一番幸せである。自分は生きている、生かされていると感じる瞬間だ。
 今日も仁成、一豊の目を盗みながら、彼奴等のおかずをかすめ取ることに成功した。今日の成果は卵焼きを三つ、めざしが二匹、、味噌汁の具の大半、デザートのヨーグルト二個、とまずまずの成果であった。
「……なぁころもさんや、わしの味噌汁に具がまったく入っていないんだが」
「あらあらお父様ったら、お食べになったのでしょう?」
 すると仁成は、ゆっくりとおでこの辺りを撫でながら、遠くの方を見ている。
「そうだったか……食べた様な、食べていないような」
 この様である。
 食卓は戦場だ、それに気付かない彼奴等はおかずを盗られても当然なのである。むしろ感謝してほしいぐらいだ、食卓の厳しさを教えてやろうと頑張っているのだから。別におかずを多く食べたいから、とかいう理由では決して無い、絶対にない。
「なぁルイチ」
 話しかけてきたのは一豊である、卵焼きを盗られたことも知らずにのん気にご飯をもそもそと食べている。まぬけな面構えだこと。
「なんじゃ、一豊。今さら返さんぞ、これはわしのじゃ」
「……?」
 一豊は訳がわからないといったような顔をして少し首を傾げた、まったくのん気なものである、傾げた首がそのまま折れればいいのにとさえ思える。
「ところでだな、ルイチ」
「なんじゃしつこいなアホ、わしの幸福時間を邪魔するなアホ、ボケ、のろま」
「いやさ、ちょっと前から聞こうと思ってたんだよ」
「ん?」
「もしかしてお前って、最近太ったんじゃないか?」
「……」
 思わず、持っていた箸を落とす。
 わしはアレだ、簡単に言うと、ブチギレた。
 レディーに言ってはいけない事ランキングに恐らく上位にランクインしているだろう言葉を、こやつはあっけらかんとした顔で言ったのだ。
 許すまじ。あぁ、許すまじ。
 引きつった笑顔を、無言のまま一豊に向けてやる。ありったけの怒りの感情を込めた、実に器用で珍妙な笑顔をしてやった。
「な、なんだよ気持ち悪い……」
 鈍感な一豊もさすがに気味悪がって、ばつが悪そうにそそくさと学校に行った。
 その背中を、穴が開くほど目一杯に睨んでやる。
 一豊が言う通り、最近本当にちょっとだけ太ったから、余計に腹が立つ。
 でも本当に、ちょっとだけだ。

お菓子の一番星

boredoms2011-05-05

チップスターって美味しいよねぇ。




獣王伝 雷血
第五話『ドッグファイト』 


 最近は、仁成のジイさんもすっかり丸くなったものだ。
 三日前なんて、ルイチが携帯電話を欲しいと言えば、その次の日にはルイチは最新型のスマートフォンを手にしていた。ルイチがその時浮かべたしたり顔は、今思い出すだけでも憎たらしい。なにせ俺は、未だに携帯電話を持っていないのだから余計に憎いわけだ。
 今はそんなジイさんでも、昔は本当に厳しい人だった。
 母さんから聞いた話しでは、俺が蒼天流の稽古を始めたのはまだ二歳の頃からだったという。
 そしてその蒼天流の稽古をつける時のジイさんは、まだ小さかった俺にとっては非常に恐ろしい存在として写った。
 恥も外聞も無く言ってしまうと、当時の俺は、言わば泣き虫というやつだ。
 俺は稽古が嫌で、何度も逃げ出した。そして何度もジイさんに捕まって、罰として尻を叩かれる。ただ叩くと言っても、一般的な平手でやるものではなく、握りしめた拳で尻を叩くのだから堪ったものではない。ジイさんいわく、この拳は愛を握りしめた拳なのだと言っていたが、叩かれるこちらとしては何を握っていようとも、尻が痛いことには何ら変わりのない事である。
 さすがに中学生になる頃には泣く事もなくなったけれど、そうなるまでは泣いてばかりいた。
 それでも稽古を続けられたのは、吾妻 結(あずま ゆい)の存在が大きかったのだろう。俺のバアさんだった人だ。
 稽古の後、道場の隅っこで泣いている俺の肩を抱き、励ましてくれたのは決まってバアさんだった。
 そんな時、バアさんが俺に言う言葉はいつも同じで、『泣くな、少年!』そう言って、いつも手作りのパンケーキを持って来てくれたのものだ。ただそのパンケーキの味は笑ってしまうほどに不味かったのだけれど、それでも俺はそんなバアさんが大好きだった。
 ジイさんの厳しさと、バアさんの優しさのお陰で、蒼天流師範代としての今の俺があるわけなのだが。
 今、現在。
 実に、情けない事になっている。
 犬束千晶が放った右ストレートは俺の眉間へと見事に到達を果たし、烈火の如き勢いのまま俺を後方へと殴り飛ばしたのだった。
 ジイさんから叩き込まれた蒼天流の術を持ち、尚且つ白虎の力まで宿しているこの俺が、身動き一つもできないままに相手の攻撃をまともに食らってしまったのだから、やはり実に情けない。
 俺がなんとか姿勢を立て直して構えを取るその間に、もうすでに犬束は俺の右側面へと回り込んでいる。
 速い。そして、それは非常にまずい。
 眉間から噴き出した血が、運の悪い事に右目に入ってしまっている。
 血によって閉ざされた右の死角へと回り込んだ犬束は、それを察した行動だろう。
 俺は堪らず後方へと跳ねる。
 が、死角から放たれた何かしらの攻撃がそれを中止させた。
 再び眉間へと爆発的な強打を受けた俺は、惨めなほどに吹っ飛ばされる。
 辛うじて受身を取り、次の攻撃へと備える為に姿勢を整えるも、犬束は先ほどの位置から動いていなかった。
 今すぐにでも保健室、ないしは病院へと駆け込みたい気持ちで一杯ではあるが、その感情をぐっと堪えて、残された左目で犬束を睨め付ける事に落ち着いた。
「そう睨むなよ、怒ると漫画みたいにもっと血が吹き出るっすよ、けっへへへ」
 犬束から出たその声色も口調も、先ほど苦しんでいた時の犬束のものとはまるで違うものだった。声変わりをする頃のまだあどけなさが残る少年の様な声に変わっている。
 俺から視線を外した犬束は、少しばかり周りを見回して、途端に冷笑を漏らした。
「けっへへ! いやぁ、相変わらずっすねぇ。あんたら三馬鹿は」
「その声は……」
 苦々しくそう言ったのは、未だに土下座をしていた鯨波だった。
「いやぁお久しぶりっす、弱虫な鯨波君、略して弱波君」
 軽く憎まれ口を叩いた犬束は、再び俺へと視線を移してにやりと笑ったような顔をする。覗く犬歯の煌きが、実に不愉快だ。
「おいらの名前は乾 幻十郎(いぬい げんじゅうろう)、干支者十一番目、戌の刻の担当者っす」
「知っていると思うけど、俺は白虎の吾妻一豊だ。それにしても、昨日は急に告白してきて、かと思えば今日は急に殴ってきて、ずいぶんと忙しい奴だな」
「昨日君に告白をしたのは、もちろんおいらがしたわけじゃないっす。そんな趣味は一切ないっすから、ご心配なく。昨日はちゃんと犬束千晶で、今はおいらだ。犬束千晶のやり方じゃ、あんたを殺すのに何年かかるかわからないっすから、おいらが直々に出てきたんっすよ」
「これはまずいですよ部長さん。一目散に逃げましょう」
 俺に諭すようにそう言った鯨波は、もうさすがに土下座をやめて立ち上がっていた。
「逃げれるもんなら逃げてもいいんっすよ。でもおいらの技、『幻法・かませ犬』は絶賛発動中っすから、そう簡単には逃がさないっすよ」