掃除おもちろーい

boredoms2013-02-27

最近、部屋の掃除がものすごい楽しい。
いいわぁ部屋の地面が見えるこの環境、いやそれが普通なんですけどねはいはい。
押入れの奥から高校の時の教科書とか出てきた時にはひっくりかえりました、どんなけ掃除してなかったのかと。





獣王伝 雷血
第二章『とめてクライシス』
前回からのつづき



「まぁそれは冗談として、このヒヨコに流れる霊気は確かに朱雀特有のものじゃ。なんともしっくりこんが認めるしかないようじゃな」
 ルイチはそう言いながら、その場であぐらをかいて座り込み、腕を組んで難しい顔をした。
 それを聞き入れた朱雀は小さな身体をピョンピョンと跳ねさせて、器用にルイチの頭上まで登っていき、そこに鎮座した。
「ヒャッハハハ、分かればいいピヨ。では改めて、オレは四聖の朱雀ピヨ。よろしくピヨ、白虎の」
 右の羽根を俺の方へぐっと前に突き出して、朱雀はウインクをした。よほどウィンクが好きなのだろうか。
「お、おう、よろしくな」
「なぁー爪が食い込んでめちゃ痛いんじゃけどー」
 ルイチは頭を左右にぶんぶんと振るが、まったく朱雀はブレない、瞬間接着剤でも付けたのではないかと思うくらいにブレない。もはや振り子メトロノーム状態となったこの状況にありながら、朱雀のつぶらな瞳は俺をまっすぐに見据えている。さすがは四聖が一人である。
「爪が食いこ……」
 ルイチの動きが急に止まり。
「こ……コンドルが食い込んどる、ゲゲラゲラゲラ!」
 なにやら急にルイチがダジャレを放り込んできたが、これは無視しておくのが得策だろう。絡んだらこちらまで怪我をするに違いない。
「ところで朱雀、聞きたいことがあるんだけど」
「ヒャッハハハ! モンゴルって!」
 と思ったら朱雀さん大爆笑でした。
 腹を抱えてルイチの頭の上を転げ回り、時折ルイチの頭をベシベシと叩く。しかもどうやら聞き間違っている、それなのにあの爆笑っぷりである。彼が解釈した『モンゴルが食い込んどる』というダジャレの要素が一切含まれていない言葉で、なぜ彼はあそこまで笑う事ができるのだろうか。まったくめんどくさい人達である。
「ヒャッハハハ! モンゴルってアラゴルンに似てるピヨヒャッハー!」
 もはや、意味不明である。
 モンゴルとアラゴルン、意味不明である。アラゴルンとは、指輪物語に登場するキャラクターの一人であるが、それがどうしたというのだ。
フロド・バギンズって! ゲラゲッゲ!」
 そうこうしていたら、ルイチも急に指輪物語にツボッた。
 そうか。わかった、理解した、了解した。
 出会ってばかりで誠に申し訳ないが、朱雀は、頭がおかしい。いや、朱雀『も』、と言うべきだろうか。
「あの……爆笑してるところ悪いけどさ、聞いてもいいかな?」
「ヒューヒュー、なにピヨ? ヒュー」
 朱雀は息を整えつつ涙を拭っている、涙が出るほどの爆笑だったようだ。非常に理解に苦しむが、感受性というものは人それぞれ違うわけなのだから、もう仕方が無いとしておこう。
「他の仲間に会ったら聞こうと思っていたんだけど、お前にはエアライズ粒子って見えるのか?」
 それを聞いた瞬間、息を整えていた朱雀の動きがピタリと止まった。同時に、さっきまでほくほくと健康そのものだったルイチの顔色が急に真っ青になった。
 朱雀はついには真顔になり、まばたきを数回して、俺を見る。
「エアラ、何ピヨ? え?」
「え? いや、エアライズ粒子だよ、空気中のどこにでもあって、目に見えないすんごく小さい粒子なんだろ? でも俺たち四聖には、その粒子の流れってやつが見えるらしいんだけど、俺にはどうにも見えないんだ。修行が足りないって聞かされてるけど」
 朱雀は何回もまばたきをした。目を何度か擦って、また、まばたきをした。
「聞かされてるって、それは誰から聞かされてるピヨ?」
「あー……一豊や、その話しはまた今度でいいのではないかのぉ……スコラ買ったげるから」
 いつの間にかルイチは、それはそれは綺麗な正座に座りなおしていた。 
「誰って、ルイチからそう聞かされているよ。ここ一ヶ月、ずっと聞かされ」
 と、俺の言葉を遮るように。
「おっとっと! そろそろわしはそろばん教室の時間か」
 ルイチは急に立ち上がり、部屋から出ようとドアノブに手を伸ばした。
 瞬間。
「ルイチ!」
 朱雀は叫ぶと、ルイチのつむじ辺りを口ばしで強烈につついた。 
「ひゃい!」
 たまらずルイチはビシっと、なぜか敬礼をキメた。
「一体お前さん、白虎に何を教え込んだピヨ」
「さんーえんなりーよんーえんなりー」
 目を瞑りながら、ルイチは空でそろばんを弾き始めた。それがまたなんともわざとらしい。
「ルイチ」
 朱雀が少し重たい声でそう言うと、ルイチはそろばんを弾いていた指をもじもじさせて「……ごーめんなーりー」とつぶやいた。



 つづく