やってくれるぜ、ランチパックこの野郎

boredoms2011-02-24

またしても、山崎製パンさんのランチパックが美味しいというお知らせです。
前回は「きなこもち」の味が美味しいというお知らせを書きましたけど、今回のお味は「焼肉(辛口マヨネーズ風味)」、新商品らしいのですがすごく美味しい。
ザ・焼肉みたいな味です、すごくデリシャス。
同じ新商品で「焼きうどん」も出てたので明日買ってみます。
豊郷小学校に行ってきました記念第二弾の画像は、田井中さんの飛び出し小僧です。
おかしくねーし!



獣王伝 雷血
第四話『青龍 其の三』

 五百旗頭の話しによれば、この三匹の干支者と最初に出逢ったのは学校にほど近い空き地だったそうだ。
 その空き地というのは、朱雀が日課にしている『草をついばむ』という謎めいた行為が行われる空き地でもあり、そこで三匹の干支者と五百旗頭が会話をしているのを発見した朱雀は、『五百旗頭が四聖を裏切った』という風に勘違いをしたのだと思われる。
 結局のところ、五百旗頭が四聖を裏切ったという情報は朱雀の勘違いだったというわけだ。
「空き地でこの子らと出逢ってな、なんや誰かに追われてるって話しやったから、ほな屋上来たらええやん? ってな事で連れて来たんよ、丁度部員も探してる最中やったし、一石二鳥やね」
 この屋上にいる猪、馬、牛の三匹は、総勢十二匹からなる干支者の中でもずば抜けて、それはもうどうしようもなく落ちこぼれなのだという。
 亥の刻である鯨波は戦う意志など毛頭ない弱腰な優男で、午の刻のひのえは何をするのもめんどくさいという不良な美少女だ、丑の刻の吉野に関しては気風が良いだけの単なる雄牛でしかない。
 つまりは人畜無害ということらしいのだが、本当に大丈夫なのかは不安が残る。ただ、ねずみ男爵の前例を考えれば、干支者という存在はみんながみんな悪い奴ではないのかも知れないと思えてきた。
「最初はあっしらも本当について行っても良いものかどうか悩んだでさあ、もしかしたらまたサーカス団にでも売り飛ばされるんじゃねえかとも考えやしたけど、姉御は決してそんな人間じゃありやせんでした、それはそれは心根の優しいお人でさあ」
 誰かに追われてた。というのは、今の吉野の会話から察するには恐らく、どこぞのサーカス団にでも追われていたのだろう。という事は、こいつ等はどこぞのサーカス団から逃げてきたのということになる。そしてそれ以前に、こいつ等はどこぞのサーカス団に所属していたという事になるわけだ。
 伝説の干支者とはいえ、人間と同じ様に、もしくはそれ以上に様々な苦労があるのだろう。そう考えると、少しだけ泣けた。
「あたいは暇だから来ただけだ」
 ひのえは少しすねたような顔で、唾でも吐き捨てる様にぶっきら棒にそう言った。
「僕は二人が行くというのでついて来たんです、でも本当に姉御さんには感謝していますよ。ここに来なければ、今頃は火の輪をくぐる練習をさせられているはずですから」
 今の鯨波が喋った内容により、こいつ等がサーカス団に所属していた事はより確実なものとなった。
 なんとも、世知辛い世の中である。


 三匹の干支者と五百旗頭の出会いの話しを聞き終えて、ようやく俺が紅茶を飲み干す頃、急にひのえが五百旗頭の着るメイド服の胸倉を掴み上げた。急に発生したバイオレンスにビックリした俺は、口に含んでいた紅茶を全て吹き出してしまったぐらいだ。ぼんやりと椅子に座って紅茶を飲んでいた五百旗頭の身体が、今はひのえによって宙ぶらりんの状態になっている。そんな五百旗頭に向かってひのえがぼそりと口を開いた。
「……飯、喰いに行こうぜ」
「食事の誘い方が刺激的すぎるよ! は、早く五百旗頭を降ろしてやれよ」
「ひのえちゃん、今日何食べる?」
 五百旗頭はけろりとした表情で言った。
「普通だなおい!」
「大丈夫でさあ部長の兄ぃ、ひのえは腹が減ると誰かの胸倉を掴み上げる癖がありやして、別に怒っているわけじゃありやせんから心配ご無用でさあ」
 そうは言われても大いに心配である、とはいえ五百旗頭の反応からしてもまるで日常茶飯事かのような対応なので、あまり心配をしなくてもよさそうだ。
 今日は土曜日で、すでに授業は昼までで終わっている。吾妻家では吉本新喜劇を見ながらお昼ごはんをみんなで食べている頃だろうと思う。
「そろそろここら辺で帰ろうかな、俺もお腹が空いてきたし」
 そう言って俺は、自分の鞄を持って椅子から立ち上がった。その時、屋上入り口の扉をノックする音がした。
「お? もしかして……来たんとちゃうかな最初の相談者が! ひ、ひとまず降ろしてひのえちゃん、こんな状況見たら相談者の人びっくりするで」
「ちっ……」
「後でアップルパイおごったげるやん」
 それを聞くなりひのえは素直に五百旗頭を降ろした、どうやらひのえはアップルパイが好物らしい。
 解放された五百旗頭は素早く椅子へと腰を降ろすと、赤毛のボブカットヘアーを軽く整え「どうぞぉお入り〜」と相談者を招き入れた。
 五百旗頭の呼びかけに「はい」と言う返事が扉の向こうから聞こえた、声の印象から想像して歳の若い女性のものだ。
「部活発足初日に相談者が来るなんて凄いじゃないか五百旗頭」
「それがやね吾妻君。この部活始めてもう三週間は経ってるのに今まで相談者はゼロなんよ、それがやっと初めての相談者かもしれん人が来たんよ! という事で悪いけど吾妻部長君も帰らんとここにおってな、ドッキドッキやねぇ」
 茶色いペンキが塗られた鉄製の扉がゆっくりと開かれる、そこに立っていたのは二本足で立つ人間サイズのマルチーズであった。
 俺の記憶が確かなら、あの人間サイズのマルチーズは犬束 千晶(いぬつか ちあき)という名前で、昨日俺に告白をしてきた干支者だ。今日も昨日と同じ様に、うちの高校の制服を着込んでいる。
「ギャーーッ!」
 楳図かずお先生の漫画でしか拝見しないような叫び声を上げたのは、情けないことに男である鯨波と吉野であった。
 鯨波はもうこれ以上ないぐらい綺麗な土下座をし、コンクリートの地面におでこをこすり合わせて「お帰り下さい」と呪文を唱えるように連呼し始めた。
 そして一方の吉野は、縮んでいた。
 恐怖で縮こまる、という言葉の意味合いでは決してない。優に三メートルはある吉野の全長が、今はハムスター程の大きさに縮んでいて、がたがたと震え上がっているのだ。
「見てくれ鯨波! 吉野がものすごく小さくなってる!」
 俺は慌てて吉野の状況を土下座現在進行形の鯨波に伝えた。
 すると土下座の状態のまま、鯨波は少しだけ顔を上げて俺を見た。
「大丈夫です部長さん、吉野さんは自分の身体を小さくする事ができるんです。吉野さんが持つ、唯一の技です」
「唯一の技が、これ……だと……? そうか、吉野がタンクトップを着れた理由がわかったよ」
「今はそんな事はどうでもいいですから、早く部長さんも土下座して下さい!」
 そんな情けない男達とは対照的に、女性陣二人は実に肝が据わっていると言える。
 五百旗頭は椅子に座ったままで一切動かずに犬束の様子を伺っている様に見えるし、ひのえは腕を組んで仁王立ちの姿で犬束に睨みをきかせているようだ。
「なぁ鯨波、男のお前らがそんなに臆病でどうするんだよ。女子の二人を見てみろ、立派なもんだぞ」
 俺は鯨波にできるだけ優しいトーンで言ってやった。
「それは違う、違うよ部長さん」
「何が?」
「あの二人、失神していますよ」
 そんな馬鹿な、そう思いながら二人の顔を再確認してみる。よく見ると二人とも小刻みに震えていて、尚且つ二人とも白目を剥いている。
 彼女らは動かなかったのではない、動けなかったのだ。
「ごめんな、お前の言う通りだったよ……」
「今はそんな事はどうでもいいです、早く部長さんも土下座して下さい!」
 さっきとまったく同じ言葉と字数で俺を土下座へと誘導した鯨波は、またおでこを地面にこすり付けて「お帰り下さい」と懇願する体勢へと戻った。
 それにしても不思議だ。
 犬束はこの屋上にいる三匹と同じ干支者であり、仲間のはずの犬束をなぜこんなにも恐怖する必要があるのだろうか。
鯨波も吉野も顔を上げてよく見てみろよ、あの馬鹿でかいマルチーズはお前らと同じ仲間だろう? あいつとは昨日も逢ったよ」
 おでこをこすり付けていた鯨波の動作がぴたりと止み、鯨波がまた少しだけ顔を上げて俺を見ている。
「どうやら部長さん、あなたは何かものすごい勘違いをしてますね」
「だってあのマルチーズ、いや犬束千晶は、戌の刻だろうに?」
「ぶ、部長の兄ぃ!」
 吉野が小さくなってから初めて口を開いた、その声は酷く上ずっている。
「干支者に、そんな名前の奴はいませんぜ」
「……本当か、鯨波
「吉野さんは嘘なんてつきませんよ。僕もあんな人は見た事もなければ聞いた事もない、だからわざわざこうして土下座をして帰ってもらおうとしているんです」
 二人とも至極真剣な表情である、これはどうやら嘘ではないようだ。だとすれば、犬束は一体どういう存在なのだろうか。
 疑問を浮かべながら、屋上の入り口に突っ立ている犬束へと視線を移す。
「犬束、あんたは」
「逃げて、吾妻先輩」
 俺の言葉を遮るように犬束は早口でそう言った、その直後、犬束の黒い瞳から一滴の涙がこぼれたのを確認した。
「逃げ……て……」
 犬束の様子がおかしい。
 自身の頭を両手で鷲掴みにし、何かを振り払うように右左へと頭を激しく振り始めた。ずいぶんと苦しい様子で、歯軋りが少し離れたこちらにも聞こえてくるほどだ。
「犬束!?」
 堪らず駆け寄ろうとした俺に、犬束は「来ないで」と静かに言った。
「早くここから逃げて、私、あなたを殺し、たくな……っ!?」
 次の瞬間、跳ねる様に身体をびくんと激しく痙攣させた犬束は、糸の切れた操り人形のようにぐったりとその場にへたり込んだ。
 これはいよいよ、ただ事ではない。
 俺は再度、犬束の元へと駆け寄ろうと一歩を踏み出す。
 それとほぼ同時、へたり込んでいたはずの犬束が俺の目の前にいる。
 さっきまでの黒い瞳の色は消え失せ、今は黄金色の猛烈な光彩を放っている。その瞳は明確な殺意を孕んで、俺を捉えていた。
「え?」 
 理解ができなかった。
 ほんの一瞬の間に距離を詰められた事も、今から放たれようとしている右ストレートの存在も。