原動力なのまだまだJoy!Joy!
今年もよろしくお願い申し上げます。
すごくどうでもいいことを書きますけども、「ブースター」とか「ブースト」という言葉が物凄く好きです。
かっこいいですブースターとかブーストとか。
「メーターが振り切ってやがる!」とか「これ以上はエンジンがもちませんよ!」とかも凄く素敵です。
あと「薬莢」もいいですね。
あとはものすごいエネルギー砲みたいなの撃った後の冷却時間とかも好きです、プシュー的な感じのやつ。
あとは全弾命中したはずなのに煙の中からヌラァとゆっくり姿を現す無傷の宇宙戦艦とかもいいですね、「無傷……だと……!?」みたいなね。
ど、どうでもいい……。
獣王伝 雷血
第二話『青龍』
昨日、ちょっとした事件が起きた。
金曜ロードショーで放送していた『風の谷のナウシカ』を一家団欒で見ている時の出来事だ。
ラストシーン手前で『ナウシカ・レクイエム』という歌が流れるのは結構有名な事だと思う、あの『ランランララランランラ』とうあれだ。
その歌が流れ始めた時、テンションの上がってしまったルイチが唄い出したのを皮切りに、母さんがそれに続き、なぜかジイさんもつられて唄い出し、ついには合唱になってしまった。
そして放送が終わる頃、母さんは五歳若返って、ジイさんは五歳年老いた。
それは精神的というものでは決してなく、実際に年齢が変動してしまったそうだ。
年齢が変動するなんて事をにわかには信じられないながらも、実際に母さんは心なしか俊敏さが増し、ジイさんは少しだけ耳が遠くなった。
ルイチが言うには、ルイチの歌に反応した霊脈の力が、その実年齢の変動を引き起こしてしまったのだと説明をした。
ただ当の本人であるルイチでさえ、なぜ無意識に霊脈の力が作用したのかさっぱりわからないそうだ。
年齢がそう簡単に変動なんてして大丈夫なのかと思ったけれど、そんな心配をしていたのは俺だけだった。母さんは若返ったと聞いて褒め言葉して受け取ったようでニコニコしているし、ジイさんは耳が遠くなった為に何の事かいまいちわからない様子でとりあえずニコニコして頷き続け、ルイチはさっさと風呂に入りに行ってすでその場から姿を消していた。そんなこんなで、もうこれ以上は考えてもしょうがないという考えにたどり着き、やり過ごすことにした。
そんな事を思い返しながら、俺は朝のジョギングをしている最中だった。
ネズミ男爵との戦いで目覚めた白虎の力をより強固なものにする為には、体力強化が絶対に不可欠なのだと語ってくれたのはジイさんだった。経験者が言うのだから、まんざら嘘でもないだろうと信じた俺は、手始めにジョギングから始める事にしたのだった。
今日は久しぶりに空が晴れた。家の中から眺める雨も決して嫌いなわけではないけれど、それでもやっぱり晴れというものはいいものだ。
しかし、そんな上機嫌でジョギングをしている俺の足は、今は静止している。
誰か心無い人間が捨てたのであろう、おそらくは弁当の空箱が入ったコンビニの袋をついばんでいるカラス達を発見した。
それを見た時から、俺の足は止まってしまった。
ついばんでいるのがカラスだけならなんの事はなかったのだけれど、黒い羽の鳥に混じって白い羽の鳥がいたのである。
頭に朱い鶏冠のある、それはニワトリに違いなかった。
しかも、はっきりと人語で叫び散らしている。
「てめぇカラス野郎、これは俺様が先に見つけた獲物だ、この朱雀様のもんよ!」
呆然だ。
ガッカリだ。
俺は反射的に目を閉じた。
もしかしたら、もしかしたら人違い(鳥違い?)かもしれないと心の一部分で期待はしていたのだけれど、そのニワトリは自分の事をはっきりと『朱雀』と、しかも『様』までつけて言い切ってしまったのだから間違いではないだろう。
あのコンビニの袋をカラスと争いながらついばんでいるのは、間違いなく我らが四聖の一角を担う誉れ高き朱雀なのだ。
俺は再び目を開けて、コンビニの袋をついばんでいる鳥達に近づいた。俺に気付いたカラス達はギャアギャアと鳴き、威嚇をしながら飛び去って行った、その場に一匹だけ残った朱雀は何事かときょろきょろとしている内に俺と目が合った。
「あ。白虎の坊主か。おはよう」
「おはよう。あの……一応さ、四聖なんだよな、あんた?」
「おうよ」
「気を悪くしないで聞いてくれよな、一応聞くがな、四聖ともあろうあんたが道端に落ちてる物なんてついばんでて大丈夫なのか? もっと誇り高く存在していなくて大丈夫なのかよ?」
「馬鹿野郎この野郎、誇りで腹がふくれるってのかよ? んなもんで腹がふくれるんなら俺様の腹は今頃はち切れてるはずだぜ」
朱雀の朱い鶏冠がぴっと立ち上がった。
「そ、そうか、それは悪かった」
「おうよ、わかってもらって何よりだぜ。んな事よりな、丁度今からてめぇの家に行こうと思ってたところなんだよ、手間が省けてよかったぜ」
「朝ご飯でも食べに来るつもりだったのか?」
「馬鹿野郎たこ野郎、んな事じゃねぇよ。重要な知らせを持ってきたのさ」
「重要な知らせ?」
俺は軽く首を傾げてみせた。
朱雀の燃えるような紅い瞳が、俺を覗き込んだ。
「おうよ、重要な知らせだ。なんたって青龍が俺達四聖を裏切りやがったんだからよ」
「裏切った……?」
青龍の現当主は、五百旗頭 蘭々(いおきべ らら)という人物だ。
ネズミ男爵との戦いの翌日、ルイチから紹介を受けていたのでどんな人物なのかは知っていた。四聖の決まり事として、当主でない者が現当主との顔合わせをする事はご法度なのだそうで、だからネズミ男爵との戦いの時には俺一人で行ったわけだ。
俺と同じ高校に通う彼女は、一言で表せば『不可思議』な奴だった。
いつの頃からか不明ではあるが、俺の通う高校には伝統が一つだけある。その伝統とは女番長の継承である、ちなみに男の番長は存在しない。
今の時代にそんな古めかしい伝統文化が存在しているというのが不思議で仕方がないのだけど、確かにその伝統は今も生きている。
そして今その伝統を受け継いでいるのが、五百旗頭 蘭々なのである。
高校入学試験の日、試験を終わらした当時中学三年生だった五百旗頭は、当時の女番長以下子分達が縄張りにしていた屋上をたった一人で襲撃、近年稀に見る激闘が繰り広げられたそうで、女子のものとは言いがたい怒号が屋上を埋め尽くしたそうだ、地獄絵図とまではいかないまでも、うら若き女達が雌雄を決する為に拳を交えるなんてものはとても尋常なものではない。
そしてついに最後、そこに立っていたのは五百旗頭 蘭々、ただ一人だけ。
五百旗頭 蘭々は中学校三年生の入学試験の日、見事女番長の大看板を手に入れたのだった。