風邪属性

boredoms2010-06-01

先週の土曜日、風邪が治りかけの時にカラオケに行ったら、どえらく悪化しました。
今週月曜日の月末決算日の時がピークにしんどかった、あんときゃトんだぜぇ、超トんだぜぇ。
やっと回復してきました。


獣王伝 雷血
第十四話「白虎 其のニ」


「まるで地獄だ、そんな事を思っているんだろう? でもそれは間違いだよ、これはね、人間が引き起こした戦争の風景さ、時代的には戦国時代よりも少し前かな」
 累累と重なる幾多もの人々、それらはすでに生存していない。
 両足がない若い男、その隣に首のない死体、それに覆い被さる形で目に矢が刺さったまま絶命している中年の男、それらを啄むカラスの群れ、もう挙げたらきりがなかった。
 何千にも及ぶ亡骸、その全てが、元は息をしていて、体温があって、親がいて、あるいは恋人がいて、子供もいたのかもしれない、そんな事象や存在が今は悲しみの要因でしかない。
 それらの映像は、ちょうどビデオカメラで撮影したような、一人の人間の視点をそのまま映し出したような、ただ一つの視点からの映像だった。
 何人もの血を吸って赤黒くなった地面に立って、大量の亡骸を見渡す視点は、白虎が言っていた事が嘘でなければ、この風景を見ているのがルイチなのだと思った時、どうしようもなく胸がつまった。
「映像の視点は、間違いなくお嬢のものだよ、こんな風景をずっと見てきたのさ」
 ルイチはただお気楽に、この千年間を生きてきたわけではなかったのだ、今のあいつを見ていると、こんな風景を見てきた人物とは、とても思えなかった。
――強いんだ、あいつは。そう感じた。
「お嬢がようやくのんびりできるようなったのは、今から四十年前ぐらいからさ、最近じゃお嬢はインターネットカフェが大のお気に入りみたいでね、そこで寝泊まりしているようだったよ」
 家出少女みたいな生活をしているんだな、とぼんやり思った。
「もちろん夜には、子供の姿のままでは入店させてくれないから、解放状態で入店するのさ」
 白虎が今喋った内容が、全くもって理解できない、子供の姿のままって、ルイチはあの子供の姿から変身でもできるのだろうか、あとは解放状態とも言っていたが、やはり理解に苦しむ。
「どうした? なんだか目が泳いでるけど、もしかしてお嬢から何も聞いていないのかい?」
 声も身体も動かないけれど、目の機能だけは自由がきいたので、俺は瞬きで返事をした。
「聞いてないみたいだね、まったくお嬢は、重要な事ほど喋らないんだから困ったもんだ。それでは私が説明しよう、現在のお嬢は子供の姿をしている、あれは言わば省エネモードなんだ、でね、解放状態というのは本来の姿、要は天血に不老不死の呪いを仕掛けられる直前の十八歳ぐらいに姿を変えることができるのさ、その状態こそお嬢の本来の姿であり、本来の力を発揮できるわけさ。とはいえ、省エネモードでも治癒術ぐらいのことはカバーできるけどね」
 今、なんだかものすごく重要な事をさらっと言ったような気がする、変身できる事についてはもう今さら問題ではない、それよりも、天血って何!? 呪いって何!? と、目を左右に激しく泳がせた。
「また目が泳いでいるね、分かってる分かってるよ、説明するさ」
 どうやら察してくれたようだ、これでルイチの不老不死の原因がようやくわかるかもしれない。
「解放状態時のスリーサイズでしょ? お嬢には私が言ったってのは内緒だからね☆」
 そう言って白虎は、舌をペロッと出してウインクをした。
 このヴォケ猫!
 違うよ! 今スリーサイズどうでもいいから!
 聞きたいことはそんなことじゃない、俺は目を血走らせて何度も瞬きをして訴えた。
「おいおいおい、おまえ必死だなおい、ヒくわちょっと、思春期なんですね、わかります。じゃあ、いいかいハアハア、言うよハアハア……」
 おまえが興奮してんじゃねぇか。
「お嬢のスリーサイズはね……上から、85! 56! 81! どうだよ少年!」
 意外にナイスバディだね!
 いや、違う違う違う!
 せっかく冒頭部分は真面目だったのに! またこんな感じに……。
「それにしてもさ、男ってのはそういうの好きだよね、まぁ女の私にはよくわからないけどね」
 女だったの白虎!? それが一番の驚きだよ!
 夢の時間は、なおも続く。