我は求め訴えたり!ランチパックきなこもち!

boredoms2010-04-20

ヤマザキのランチパックのきなこもち(おたべの求肥ときなこが入ってる)は、えげつないぐらい美味しいです。
先週まで近所のコンビニに置いてあったのに、今日行ったら仕入れてなかった!なぜに!?
先週なんて八枚食べたぐらいお気に入りやったのに、すごく残念、ランチパック恐ろしい子


獣王伝 雷血

第十話「出発」

 桜は、もうすっかり散ってしまったのか。
 そんなことを漠然と考えていると、いつの間にかホームルームも終わり、今日の学校での全ての時間を消化した。
 今日は、授業中も昼飯の時間もずっと上の空だった、何回か先生に注意されたと思うのだが、あまり覚えていない。
 それもそのはず、今日はあの馬鹿でかいねずみと会わなければならないのだ、歯医者さんの予約を入れている日よりもずっと暗い気持ちになる。 
 改めて、ねずみ男爵の手紙を確認してみよう。
 手紙には、ねずみ男爵の家の地図が示されていた、しかもその地図は手書きではなくグーグルマップだった。ねずみの癖にパソコンを持っているとは恐れ入った、しかもプリンターまで持っているようだ、俺よりもずっと先進的だ。
 ただ、書いてある手書きの字が、ものすごく下手だったのには意表を突かれた、小学生ニ年生のそれだ。自分の勝手なイメージではあるが、ねずみ男爵は字が上手いものだと思っていた、紳士的なあいつが『字が下手』というのはキャラが少しブレる、なぜパソコンを持っているならワードを使わなかったのかが疑問に残る、ねずみの指では打ちにくいのだろうか。と、別にそこを掘り下げても仕方がないので、とりあえず学校を出ることにした。
 野球部やサッカー部のみんなが、元気一杯に青春を謳歌している校庭の中を、憂鬱な気持ちで歩いていく、すると校門にちょっとした人だかりができているのに気がついた。
「この子かっわいー! ねぇねぇお菓子食べる?」
「あなた誰かを待ってるの? え、何々? そんな事よりも? お菓子はないのかって?」
「それコスプレでもしてるの? え、これ地毛なの!?」
 悪い予感がする、予感というよりも確信に近い。
 人だかりから首をのぞかせると、人だかりの中心地点にいる人物と目が合った。
「おお!待っておったぞ一豊!」
周りの人間にもらったのであろう、様々なお菓子を両手一杯に抱え込んだルイチが叫んだ。
「あら、吾妻君の……妹さん?」
クラスメイトの一人が俺に問いかけた。
説明がめんどうなので
「親戚の子なんだ、今うちに遊びに来てるんだよ」
と、無難に答えた。
ふぅん、という感じでルイチと俺を見比べている、ちっとも似ていない、とでも思っているのか少し腑に落ちない感じのリアクションだった。
「じ、じゃあ用事があるから、さぁ行こうぜルイチ」
「うんむ」
また遊びに来てねぇー、などの暖かい言葉と視線を浴びながら、俺達はその場を後にした。


「なんで学校まで来たんだよ? 家で待ってろって言ったろ」
 今日は朝からルイチは興奮ぎみだった、俺がねずみ男爵のところに行くのに着いて行くと言って聞かないのである。
「興奮するではないか、今日は決闘の日なのだぞ? 居ても立っても居られないではないか、それにママ殿もやる気満々でお弁当を作ってくれたぞ」
「で、そのリュックを背負ってるのか」
 ルイチの今の格好は遠足スタイルそのものだった、俺が小学校の時に使っていたリュック、水筒、帽子まで被っている、それにさっきもらったお菓子をリュックにパンパンに詰め込んで大手を振って歩いている。
「わかってるのかルイチ? 俺は遠足に行くんじゃないんだ、おまえがさっき言ったように決闘になるかもしれない所に行くんだぞ? すごく危ないんだ、もしもおまえに何かあったら、俺が母さんとじいさんに怒られるどころか、絶縁、いやそれ以上の……」
「おいアホトヨ、なぜわしが危うくなればお主が怒られるのじゃ? 意味がわからんぞ」
「意味って、そりゃもう家族みたいなもんだからだろ、母さんなんて昨日表札におまえの名前を書き込もうとしたんだってな、珍しくおまえが止めたらしいけどさ?」
 そう言うと、気のせいかルイチは険しい顔になった気がした、急に黙りこくったかと思うと、リュックから飴玉を取り出して、それを口にほりこんで、ニ、三回転がせてみせた。
「いらぬ心配をするな、心配をするなら自分の心配をしろ、お主のようなガキに心配されるほどわしは弱くない、わしの千年間をなめるな」
 出会って以来、初めて真面目なトーンで喋っているルイチを見たので、面を食らってしまった。何か気に障る事でも言ったのだろうか?
 それよりも、ルイチの言った通り、確かに自分の心配もしなければならなかった。
 今の俺は白虎の力に目覚めていない。あの馬鹿でかいネズミに、純粋な人間としての蒼天流師範代・吾妻一豊として挑まなければならないのだ。
「わかったよ、そこまで言うなら着いて来い。その代わり、あんまり近くにいるんじゃないぞ、離れて見てろ、いいな? 絶対だぞ?」
「いちいちうるさい奴じゃな、姑かお主は。さぁ御託はもう十分。気を引き締めて、行くぞ一豊!」
 俺は、ねずみ男爵とどこまで渡り合えるのだろうか、不安だった。
 俺は、もしルイチが危ない目にあったら助けられるだろうか、正直言って自分の事で精一杯なのは目に見ている、不安で奥歯がカチカチ鳴った。今更ながら、不安と恐怖が手に汗をかかせた。
「どうした一豊? もしや、恐いのか?」
「そんなわけないさ、恐いものはフナムシだけだ」
 俺は、嘘をついた。
 本当はここ数日眠れていなかった、何度イメージしてもねずみ男爵に勝てないのだから困った。
 本当に、困った。
 勝てないという事は、つまりは。
 ――俺は死ぬのだろうか?
 「聞け、一豊や。お主は死なない、死なせやしない。こんなところで終わるなんぞ、このわしが許さん」
 まるで、泣きべそをかいた子供をあやすような言い様で俺にそう言ったルイチに、初めて千年間の凄みを感じた、と同時に手の汗がひいた気がした。これじゃどっちがガキかわからない。
 それでもやっぱり、不安と恐怖は俺にこびりついて離れようとしない。
 でも、俺は死なないそうだ、死なせやしないそうだ、許してくれないそうだ。
 だったら、気を引き締めて、研ぎ澄まして、喰らいついていこう。そして、こいつと一緒に家に帰ろう。そう決めた。
 昔、誰かが言った言葉を思い出す。
 家に帰るまでが、遠足だ。