人の夢は終わらねぇ!
ついに買いました、デジタル一眼レフカメラ!
ニコンのD90 18〜105レンズキット、あとは単焦点レンズ(なんとレンズ一個で2万!カメラ業界よ!いや俺よ!そんなん買って何撮るの!?)も買って合計で、12万円!ぐぇあ!
うまい棒めっちゃ買える!
でも120%満足です、いちご120%です。
獣王伝 雷血
第九話「修行 其のニ」
俺は今、重たいカメの甲羅を背負って新聞配達をしている。
別に頭がおかしくなったわけではない、ルイチ大先生がそうしろとおっしゃるのだ。
当然、俺は必死に拒んだ。
すると、ルイチは俺のお気に入りのHなDVDの裏側にカッターナイフを突き付けて
「こいつがどうなってもよいのか?」
と俺を脅した。
俺はすっかり素直になり、今こうして新聞配達をしている。笑いたければ笑えばいい、あのDVDは俺の魂なんだ。
修行に入って二日目、俺は後悔し始めていた。
昨日は意味のわからない修行をさせられ、今日は今日でこんな有様だ。
というよりも、本当にルイチは白虎覚醒の方法を知っているのかさえ怪しく思えてきた。
配達が終わったら、一度聞いてみようと思う。
「おかえりなさい、カズちゃん。どうしたの、甲羅なんて背負って?」
「今日から蒼天流は亀仙流になったんだよ、それよりルイチは?」
言いながら甲羅を降ろす。
「ルイチちゃんなら、散歩に行ってくるって出ていったわよ」
「そうか、じゃあとりあえず朝飯でも食うかな」
「朝ご飯はなにも残ってないの、ルイチちゃんが全部食べちゃった、素敵な食べっぷりだったわ、ね? お父さん?」
「あぁ、あれは惚れ惚れする食べっぷりでしたな、TVチャンピオンの大食い王選手権を見ているようだったよ」
今日のご飯は三合炊かれていたらしいのだが、母さんとじいさんが一杯ずつ食べ、あとの残りはルイチが全部食べたそうだ。
どんだけ食うんだよ!
いっそのことTVチャンピオンに応募しろ! んで優勝しろ! がんばれ、ルイチ! おまえがナンバーワンだ!
あんな小さな体にどれほどのカロリーを欲するというのか、せめて俺の一杯分くらい残しといてくれてもいいじゃないかと思いながらも、気持ちを切り替え、お弁当を買いにコンビニへ行くことにした。
家から一番近いコンビニには、自転車で10分ほどで行ける。
コンビニに着き、中に入る、すると二人の若い店員さんの会話が聞こえてきた。
「あの子さっきからすごい本読んでるわよ、今の子供はすんごいのねぇ」
「ほんとねぇ、親の顔が見て見たいってやつよね、注意するにもこっちが恥ずかしいわよねぇ」
二人が見ている方に視線を移すと、銀色の髪をした少女が、アダルト雑誌を立ち読みしている景色が目に映った。
というかルイチだった。
なに朝っぱらからそんな本読んでるんだよ! しかもあれは……COMIC 天魔だ!
ここは他人のふりをしよう、そう心に固く誓った。
だが誓った途端、
「おや! 一豊ではないか! 買い物かい? ついでにアイスクリームを買っておくれ」
気づかれた、しかもついでにアイスクリームをせがまれた。
COMIC 天魔を手に持ったまま、エロいピンナップをなびかせてこちらに駆け寄ってきた。
もはや他人のふりは通用しない、二人の店員は俺をじっと見ているのがわかった。当分の間、この店には来にくくなった。
「わ、わかった、わかったから、その本を早くしまってアイスクリームを持ってきなさい!」
「は〜い」
持ってきたのは、ちゃっかりハーゲンダッツだった、しかも四つ持ってきた。
「なんで四つも持ってくるんだよ? あ、なるほど、じいさんのと母さん、それに俺とおまえの分か? けっこう気が利くじゃないか、おまえにもそんな良心があったんだな」
「当たり前じゃ、これでも千年生きておるんじゃから、その辺の気配りは心得ておるわ。このストロベリーはママ殿の、グリーンティーは仁成、クッキークリームとアズキミルクがわしの分じゃ」
……俺のは?
ルイチを自転車の後ろに乗せて、家に帰る為にペダルをこぐ。
買ってやったアズキミルクを鼻歌まじりに食べているルイチに、俺は問いかける。
「なんであんな雑誌読んでたんだよ? おまえみたいな子供が、アダルト雑誌なんて読んでたら周りの人間がザワザワするんだから気をつけろよな」
「そうか、それは気をつけんといかんな。最初は別冊マーガレットを読もうと思っておったのじゃが、うるし原智志先生の表紙を目にした時には、もうすでに手が伸びておったわ」
なぜ!? この子うるし原智志先生好きなの!? 女の子ですよねルイチって?
これ以上突っ込んで聞いてしまったら、ルイチの変な性癖が発覚してしまいそうで怖くなった。何事も深追いは禁物だ、話題を変えよう。
「そんな事より、聞いておきたいことがあるんだ、おまえは本当に白虎覚醒の方法を知ってるのか?」
「愚問じゃアホたれ、まぁその話しは家に帰ってからしてやろう」
俺は、後悔していた。
「ギュとして、ドギュンじゃ!」
「グッとして、ズドンじゃ!」
「こうな? こうズバッ!」
「ずどどえやー!」
これが、ルイチによる白虎覚醒に関する説明の全てだ。
覚醒に重要であろうと思われる箇所が、全て擬音語での表現だったのには唖然とした、四つ目なんてただの奇声でしかない。
翌日も、その翌日もルイチは俺に修行を施してくれたのだが、ついに俺は白虎の力には目覚めなかった。
なぜオレはあんな無駄な時間を……三井寿の気持ちが今なら痛いほどわかる。
そして、ねずみ男爵との約束の日がやってきた。