アニメ銀魂本当に終わるのでしょうか…また詐欺であって欲しい

boredoms2010-03-18

獣王伝 雷血

第5話「帰宅」


 俺の住んでいる田護崎町(たごさきちょう)は、5年前から都市開発が進められていた。
 開発の始まる5年前までは、少しマイナーな漫画やCDを買いたいと思っても、商店街の本屋さんや、未だに商品のラインナップの大半がカセットという老夫婦の営むCD屋さん(看板にはCD屋と書いてあるのだからCD屋なのだろう)では扱っておらず、わざわざ隣町までよく買いに行ったものだが、『田護崎パルゼ』という大型ショッピングセンターができてからは本当に便利になった、有名レコードショップや大型本屋もパルゼの店舗に入っているので大概の物はすぐに手に入るようになった。
 順調に都市計画が進んでいるとはいえ、まだ開発が及んでいない地域は依然として昔ながらの下町の姿を残しており、俺の家の地域もその部類に入る、特に俺が通学路に使っている道には電灯が少なく、夜道は男の俺でも少し怖いくらいだった。
 そんな通学路を、ねずみ男爵からの果たし状を読みながら、自転車がギリギリ倒れない程度のバランスとスピードでたらたらと帰っているところだった、この先の事を考えるといつもの帰り道が余計に暗く感じた。
 ところで、机を並べた即興ベッドで眠っていた、というよりは気を失い続けていた高砂雪江はどうなったかというと、とりあえずは職員室の前まで俺が高砂雪江を運び、戸を3回ノックしてから俺は猛ダッシュで逃げてきた。
 というのも、「高砂雪江を無事発見、今は教室にいる」という報告を先生に言いに行くのが普通なのだろうが、そうすれば必然的に俺は前にも増して聞き取り調査をされるだろう、もう連日の聞き取り調査でいい加減飽き飽きしていたし、それよりも何より「干支者が高砂雪江を連れて来てくれたんだ」などと報告をすれば余計に話しがややこしくなり、混乱を招きかねないと思ったからだ、干支者の存在自体は日本のみんなが知っていると言っても過言ではないほどに周知の事実ではあるものの、それでも実際に現れたとなると話しは別だろう、今ごろ職員室は熱々おでんをひっくり返したような慌て様のはずだ。
 ねずみ男爵の果たし状を4回ほど読み直した頃、暗がりの通学路を抜け、住み慣れた我が家が見えた。
 家の者は多分今ごろ夕飯を食べている頃だろう、俺の記憶が確かならば、今日のメニューはオムライスだったように思う。
 我が家は本来ならば4人家族なのだが、実際には3人家族で生活している、一人少ない分は親父の存在だ、名前は吾妻 豪(あずま ごう)、雷血の現当主でもある親父はいつも旅に出ていて、家にはじいさんと母さんと俺という家族構成だ。
 じいさんの名前は吾妻 仁成(あずま ひとなり)、1代目前の当主だった人で、俺にとっては蒼天流の師匠でもある、じいさんの人間性を一言で表すとすれば、武人である。
 この平成の世では、武人などという人格は、今や時代劇ぐらいでしかみる事ができないであろう日本古来の遺産の様なものだと思うが、我が家ではその遺産が茶をすすって日々を元気に生きている。
 母さんの名前は吾妻 ころも(あずま ころも)、常にふわふわしていて、奇跡的なほどに人が良い、この前なんて俺が目の前にいるのにオレオレ詐欺に引っ掛かりそうになった人だ。
 息子の俺が言うのもなんだが、とても37歳とは思えない容姿で、世間的に見てもその容姿は若く見えるようだ、実際に田護崎町商店街主催美人奥様コンテスト「商店街に咲いた花」ではすでに殿堂入りを果たしており、床の間にはその時もらったトロフィーが燦然と輝いている。
 そんな愉快な家族が待つ家に俺が帰ったのは、20時前だった。
 我が家では、食事をする部屋は台所ではなく居間でする事になっている、とりあえずただいまを言おうと居間に向かった。なんだかいつもより賑やかな雰囲気がする、お客さんでも来ているのだろうと思ったので少しかしこまって居間に入った、と同時に待ってましたという勢いで聞き慣れない声がした。
「お主の父上は、それはそれは見事な最後であったぞ!」
 じいさんと母さんが座っているいつもの食卓に加え、ケチャップで口の周りをべちゃくちゃにした小さな女の子が座っており、その手に持っているスプーンで俺を指しながら、そう叫ぶのだった。
 状況の把握が全然追い付かない中で、一つだけ理解できた事は、今日の夕飯はオムライスで合っていたという事だけだった。